「……ってわけには いかないだろうな」
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「……ってわけには いかないだろうな」
トワイライト | スカート
ちょうイイ話
鶴谷 最初は「ジャケットを描いてください」と依頼をいただいて、もう即OKだったんですけど(笑)。そのあと、「架空のマンガの1コマがいいと思います」というメールが来て「めちゃくちゃカッコいい!」って私もなりました。
──僕も鶴谷さんの「メタモルフォーゼの縁側」の愛読者なので、澤部くんが「鶴谷さんしかない!」と思った気持ちはわかるんですが、今回のコンセプトに鶴谷さんがハマると感じた理由を具体的に教えてもらえますか。
澤部 鶴谷さんのマンガにある余韻というか余白のようなものがめちゃくちゃ好きなんです。たとえば「メタモルフォーゼの縁側」の1巻だったら、第3話の終わりの歩道橋のシーンがめちゃくちゃ好きなんですよ。あのコマって本当にいいし、こういう世界観だったらスカートと絶対に合うと思ってお願いしました。鶴谷さんとの打ち合わせでもこのコマの話を持ち出したくらい好きなので。スカートの音楽でも、歌ってないときに音楽に情景がパッと宿るような瞬間が、自分の手応えのひとつとしてあるんですけど、それに近いものが鶴谷さんのマンガにはある気がするんです。
──「架空のマンガの1コマをお願いします」と口で簡単に言うことはできますけど、その「実在しないマンガの1コマ」状態を作るのにもやっぱりストーリーが必要ですよね?
鶴谷 はい。最初は1コマだけのカッコいいコマを作ろうと思って描いてみたんですけど、どうしても作り込もうとしちゃって、すごく難しかったんです。なので、その方法は諦めて3ページくらいのネームを描きました。それを見て、森さんが「こことここのコマを抜きます」って決めてくださって、それを仕上げたという感じです。
澤部 結果的には、そのコマからちょっと発展したものを描いていただいたものがジャケットになってます。その作業はすごく楽しかったな。
鶴谷 楽しかったですね。選ばれたのが普通のマンガだとあんまり注目されないような、つなぎのコマだったので。でもそういうコマが描いていて好きだというところもあるので、抜いてもらっただけでも快感がありました。しかももとのネームでは1人が階段の下にいただけだったんですけど、それを2人にして、さらに吹き出しも付けて、つなぎっぽいセリフをいくつか私が挙げて、そこから選んでもらって。
──それが「……ってわけには いかないだろうな」という、コマの外にいる人のモノローグになって。澤部くんかもしれないし、アルバムを聴いてる誰かかもしれないし。
澤部 そうなんです。想像の余地がめちゃくちゃあるものができたんですよね。
鶴谷 「モノローグが好き」って打ち合わせでもおっしゃってましたもんね。
高校1年のときに木村紺「神戸在住」に出会いまして。そこからいろんなものが変わっていきました。柳沼行「ふたつのスピカ」とか、小原愼司「菫画報」とかを急に読みだして、「マンガってこんなに楽しいんだ」ってなって、自分の好みがだんだんできあがっていきました。
木村紺「神戸在住」
柳沼行「ふたつのスピカ」
小原愼司「菫画報」